友人に誘われて、コーラスの公開レッスンに参加したのが きっかけで入会しました。視覚障害者は、私一人。
歌のレッスンは、テープに録音します。歌詞も、友人に読んで 貰い、録音しておきます。それを聞きながら、点字に直します。 歌はどんどん新曲に取り組むので、追いついていくのが大変です。 それがちょっと重荷になってきたので、友人に、コーラスやめようかなと 打ち明けました。今日は先生と皆さんに、お別れの挨拶をしようと思い、 チャンスをうかがっていました。休憩時間に先生が、みんなちょっと聞いてくれるかな? と言われました。
杉田さんがコーラス止めたいと言っているのだけれど。 私も杉田さんに対する努力が足りなかったと思うし、皆さんも、 出来るだけの協力して貰えるかしら?杉田さんは音符も見えないし、 歌詞も読めないのだからね。それでも杉田さんが止めたいなら 仕方ないけど、と言われたのです。びっくりやら、ウルウルやら。
先生に、ここまで言われたら、私も止めますとは言えません。 私は立ち上がって、「どこまで続くか分かりませんが、もう少し 頑張って見ますので、先生、皆さんよろしくお願いします」と 頭をさげました。拍手を頂き、うれしくて涙が出そうになりました。 友人が、先生に予告してくれたのです。
とは言うものの、私が入会した当時から、先生は、気を使ってくださっていました。 例えば、歌が始まる前に、皆さん輪になって自己紹介をして、私に名前を 覚えさせます。そして、私がAさんと呼ぶ。ハーイとAさんが答えて、Cさんと呼ぶ。 という風に言葉のバレーボールをします。またリズムにのれない時は、子供のころ 遊んだ「夏も近づく八十八夜」のような手遊びでリズムを取り、いろいろな人と 組み合わせてくださいます。
時には、皆さんグループごとになるべく早く 輪になってみてくださいと号令をかけます。隣の方が、急いで私の手をとり、 輪になります。先生は、「皆さんとっても早く輪ができて、コーラスは、 グループ連携が大事。だらだらしていない、どこへ行っても自慢できるよ」と 自信を持たせてくださいます。
歌うときも、ソプラノ、メゾソプラノ、アルトの人達が、ごちゃごちゃに混じって 歌う事なども試したりします。発声練習も、私が見えないので、鼻から上は笑顔、 鼻から下は魔女の声などとわかりやすいたとえで説明されます。 また、椅子に座っている時は、左手を上向き、右手を下向きにして、パチっと 自分のテを合わせて、左右の人の手に合わせてリズムを取りながら歌います。 これも私のために先生が考えてくださるので、感謝。
1年間行事も沢山あり、老人ホームに慰問に行ったり、12月のクリスマスには、 ちょっとしたミュージカルで、私はモーツァルトの役を演じました。6月には コンサートが控えています。今年は、どんなミュージカルをやるのかしら。 先生は、「杉田さんは、あまり動かなくっていい役を見つけるからね」と、 なにか考えているらしい。毎年8月には、歌を通して、楽しい合宿があるので、 今年は、参加してみたい。
去年の秋は、ウイーンツアーで、本場のミュージカルを見て、皆さん楽しまれました。 先生は、「この次は、杉田さんも是非参加するように」と、声を掛けてくださいました。 歌に付いては私からお願いしたわけではないのに、先生がピアノで弾き語りと歌詞を 読んで、テープに吹き込んでくださいます。とってもありがたい事です。 なにはともあれ、私が楽しみながら参加できるような環境にと、いつも考えてくださいます。
今では、先生や仲間の皆さんと、メールで情報交換をするなど素晴らしい指導者と 仲間に恵まれていることを痛感します。これからも楽しく歌えることに感謝します。